白牡丹殿下が語る「真にロマンチックな恋愛」についての物語。

　「本当のところ恋愛とは、事実の相における出来事ではないのだよ！　事実のみを問題とするなら、恋愛は少しも現実的ではない。どうして一人の乙女が、一人の男にとって、それ以外の総ての人々と較べることもできないほどに貴重だなどということが起こり得るだろう？　恋愛においてはそんな状況が起こる。しかも相手をまだ良く知りもしないうちから！　純粋に事実の問題として考えるなら、これはまったく現実的ではない」

　「真実の恋愛は、およそ不可能な恋愛として現実化するんだ」

　「一つ．．．恋にまつわる物語りでもして聞かせようか．．．」
　そうして殿下は、恋の物語を語られた。．．．

　白牡丹殿下の連作。
　今回は、死よりも恐ろしいという〈否耶〉の物語。

「．．．『否定』はそれのみでは存在し得ない。単独で存在することは出来ないのだ。『否定』は、何かを否定しているときにしか存在しないんじゃよ。否定する相手がなくなれば、『否定』もなくなる。」

　昔話のような寓話。

　　老いたる悲劇作家が白牡丹殿下に語って聞かせる、饒舌な物語。

　　「悲劇は、それを理解する者にとってのみ悲劇なのです。今も昔も、悲惨と不運は人間の生にとってありふれた事実でございます。悲惨や不運はそれ自体で悪なのではありません。それに悲劇が従う法は、単なる善悪を計る倫理の法ではございません。悲劇の法則はより高次の法なのです。．．．」

　　「けれど、悲劇を失った人々はどうやって、暗い時代が終わり得ることを知り得ましょうか？．．．」

　　戦場の片隅で救助の舟を待ちながら語られる、数々の身の上話が織りなす不思議な運命の紋様．．．

　白牡丹殿下のもとを訪れた天人花が語る、奇妙な冒険物語。

　「．．．嘘というのは所詮は根無言、無跡事ですもの、大した罪ではございません。一時響いては消える、儚い空音．．．。それに比べると、正直とか誠実とかは困りものですの．．．」

　とりとめもなく迂回を繰り返す物語の行き着く果ては．．．？

　　　　　　　　　　

　天人花が年若い姪に語る、諦める恋の物語。

　「私は結婚には向かない女なのよ。いつも恋をしている女は、名誉ある結婚生活を守ることが難しいのよ。．．．」

「．．．多情な女の運命はね、寝取られ亭主の妻にしかなれないということなのよ。．．．」

　月も星もない雨の夜の別れと、再会の宵の満月。天人花と白牡丹殿下の若い日々が二重写しになる、魂の婚姻の物語。

　　白牡丹殿下が語る、言葉を巡る冒険の物語。

　古の国の王女、青藤の花房姫は、恋人への想い故に罪を犯し、「語る言葉がすべて現実になる」という呪いをかけられてしまう。
　栄華と絶望の果てに彼女が見いだしたのは．．．

　蝶に変化する紅い花．．．現実には由来を持たないはずのその幻想を、なぜか共有してしまった二人が出会う。
　日常に忍び込む幻視、幻想に報復する現実。交錯する認識。自己と他者。世界性．．．。

　ワン・アイディアからの展開で短編を書いてみようと思って、初挑戦した大人向け現代物。
　幻想小説というより官能小説と銘打った方が読者は増えると思われ（藁。

　ジュラの血の祭儀と、彼女を巡る人間たち。
　短い散文の連作で綴るダークなロック・ファンタジー。ロック・オペラの企画書みたいな感じかも。

　グロテスクなイメージや暴力的な描写や非倫理的記述がありますので、18禁とは言いませんが、自己の判断力に責任のとれない方は入場をお断りします。
　でも言っときますが、私は社会性がないだけで、反社会的なわけじゃないです。まぁ、たまには、こういうのも書きます。

　年の瀬の街角で出会った猫のゴン之助と幽霊のトードリ。
　バブル崩壊を経てちょっとだけほろ苦い味わいの、金融街のメルヘンです。

　むかしむかし、まだ世界が今のようにキチントしていなかったころ、いろいろな不思議が当たり前のように起こっていました。

　人間が世界のみんなとかわした、だいじな約束は．．．？
　（子供向けではありません。）

　若き日の詩心王、ディハーナの即位を巡るいくつかの場面。
　金位時代のリーアも登場です。

　　１７才になったアルモナは、楽師のタマゴになっています。
　師匠のお婆が最前の音に還って以来、次々と村に異変が……

　呪歌を操る楽師リーアのシリーズ、そのパイロット版のような短編。
　長いお話の「エピソード０」みたいなもんで、ちょい地味ですが、楽しんで書きました。