◇背景と舞台

設定はいろいろ考えてますが、当面は、ほのぼのしみじみしたエピソード中心になると思います……

【時代】
夜を照らし、空を翔け、大陸を結び、地を駈せて……そうして、耳を聾する騒音で〈最前の音〉[いやさきのね]を覆い尽くした旧世界。
その文明の狂気を〈地球返し〉にしてから、約1000年。
大陸のなかばを覆う銀砂流は、燃え尽きた旧世界の遺灰。
人々は銀砂流のほとりに町を築き、旧き穢[ケガレ]の残る忌地を避けて暮らしている。
歌聖楽都と、聖楽師たちの歌を、心の拠り所にして。

【地理】
◆大陸の北方はソナリス山と、それに連なる山々に遮られて、人の生活圏の北限が定められている。
　聖都　歌聖楽都[カンターリア]は、そんな人界の極北に位置している。
　998年、天雷により聖都は半壊したが、数年の混乱ののち、再建が進んでいる。
◆大陸北部は、東側から深く切れ込んだ内海のため、気候は比較的穏やか。
　大陸最大の都市、星辰人都［アスティリア］を盟主として、緩やかな連合勢力をなしている。
◆大陸の東方は多くの港と、沿岸の諸島部からなっている。
　交易で潤う海旋郷市[マリアナン]を中心に、海浜地方一帯は海旋郷[マリアーナ]と呼ばれ、郷市の取引委員会が実権を握っている。
◆南方に第三の勢力圏をなしているのは、緑園郷[グリアーナ]。
　ここも海旋郷と同様、同名の郷市、緑園郷市[グリアナン]を中心として一国の体をなしている。
　郷市に住む詩心王ディハーナが、事実上、南方地方の王。
◆これに対し西部山岳地域は、多数の部族がそれぞれの掟の下に生きており、まとまった勢力とはなっていない。
　山岳諸族の間には小競り合いが絶えず、時には星辰人都と緑園郷の勢力争いにより、介入戦争が激化することもある。

【呪歌と楽師たち】
万象は、最前の音[いやさきのね]から生じ、最前の音へと還ってゆく──
──楽師たちは〈歌〉によって、世界の万象に働きかける。

楽師と呪楽師：
　楽師はもっとも広義の呼び方で、呪者、祭礼の巫、娯楽・芸能者の、すべての側面を含む。
　もっぱら呪歌をこととし、呪法の請け負いを生業とする楽師は、一般の楽師と区別して呪楽師と呼ばれるのが普通。
　また、呪楽師の中でも特に抜きん出た能力を有する者を〈魔伎〉[マギ]と呼ぶことがある。
聖都の楽師：
　聖都・カンターリアで学び、額に銀の斑痕を受けた楽師は、「正式な楽師」ともいわれる。市井の楽師たちにくらべ、どこでも重用され、尊重されるが、絶対数は多くない。
戻り異端：
　聖都で学びながら、聖都の教えに二度までも背いた者は、額の斑痕に黒い二本線の刺青がいれられ、追放される。陽の当たらぬ世界で「黒い呪楽師」となり、呪いや復讐を請け負うものが多いと言われている。
聖楽師[アンヘル]：
　聖都の楽師の中でも、特別な秘儀を伝授された異能の楽師で、「アンヘル＝御遣い」と呼ばれ、畏怖されている。無位から金位まで階級があるが、一般には詳しいことは知られていない（高位の聖楽師ほど斑痕が派手……らしい）。数は十数人と、僅少。
　ほとんどは聖都に住まい、重要な祭礼のために各地に派遣される。聖都を離れて各地の王に仕えたり、自ら楽房をひらく者もある。聖楽師の楽房で学んだ者は、聖都の楽師に次ぐステイタスを与えられる。
最後の金位と歌聖楽都を襲った天雷：
　歌聖歴998年、天雷によって歌聖楽都［カンターリア］は半壊し、金位の秘儀伝承に不可欠な奥院を失った。そのため、当時その位にあった聖楽師［アンヘル］は「最後の金位」と呼ばれるようになっていた。
　混乱の中、金位の行方は知れず、聖都もまた詳細を明らかにしようとはしなかった。
　そのためある人々の噂では、最後の金位は世の罪を負って贖罪の旅路を人知れず続けているのだと言い、また別の説によれば、聖都がそうであったように、最後の金位も世の罪を身代わりに受けて天雷に撃たれ、その身を最前の音［いやさきのね］に返したのだとも言う。
　最後の金位を騙るニセモノは後々までも各地で後を絶たず、彼らの目的も、力量も様々であったが、聖都が無事であったなら決して身近に出くわすことなどなかったはずの金位が現れたと聞けば、多くの人々は進んでそれを信じ、後々まで語り合うことを大いに楽しんだ。
　かくて金位の伝説はふくらみ、花開き、語り継がれてゆくこととなる。

◇登場人物

アルモナ	北方の小村に生まれたが、流れ流れて緑園郷市近くのレピ村で〈お婆〉の弟子となった。両親に死なれ、野盗に襲われ、戦に巻き込まれ、ハードな幼少期を過ごした甲斐あって立派なツッコミ・キャラに成長したが、みずからボケをかますことも厭わないひたむきな姿勢は、作者のお気に入りである。
リーア	正体バレバレの最後の金位。とはいえ、まだまだ秘密を隠していそうな複雑な身の上。年下の者にも丁寧な口をきくのは、自らの人間音痴で失言をしないための知恵らしいが、丁寧に話しても失言が減るわけじゃない。当面、最強の天然ボケ・キャラという芸風は揺るがない予定。
詩心王ディハーナ	〈時代が彼に恋してる〉がキャッチ・フレーズ。美貌とエキセントリックな外見で民衆のハートを鷲掴み。口は悪く、あこぎな手も使うが、ワガママなくせに利己的ではないので、なんだかんだ人望はあったりする。根はクソ真面目だが、今後は鋭いツッコミと毒舌が期待される。
お婆	「呪界の虜」影の主役…!? 【好きな食べ物】　キノコ炒め。沢ガニの素揚げ。 【嫌いな食べ物】　乳製品。ピーマン。 【日課】　散歩。ついでに村の子供を脅かすこと。弟子いびり。 【口癖】　「お前が悪い」
↓これから登場する予定の人々 サーキィ（エバラッド） 銀砂の鷹ラシード アルフラーナ イスハーク シェラーサ